算数・数学を学ぶ意義
前回の記事では国語を学ぶ意義についてお伝えしました。
今回は算数・数学です。ちなみに私は大学生くらいまで、算数や数学と聞くと泣いて逃げたくなるほど数字が嫌いでした。
じゃあなんで今こんな記事を書いているのかと言うと、生きる上で必要な思考を養ってくれる科目だからです。
中学校で数学を学んでいた時、私含めてクラスの何人かの生徒が「こんな難しい計算社会に出て使わんのに何でやらなあかんだ?」と先生に聞いていました。
その時の先生の回答は「やらなあかんって決まってるから」「大人になったら分かる」「今までもみんなやってきたから」でした。
これでは当時中学生だった私も納得できるはずありません。「そんなん知らんわ」と内心思いながら、テストで親に怒られない程度の点数が取れるくらいしか勉強してきませんでした。
高校に入っても、相変わらず数学は嫌いでした。
それでも何とか赤点を取らずに済んだのは、当時の数学担当の先生が、私の読んでいた『緋色の研究』(シャーロックホームズの長編シリーズ1作目)を見て、「数学勉強したら名探偵に成れるで」と言ってくれたおかげです。
ありがとう、K先生……
そんなありがたいお言葉もすぐに忘れて大学生活を過ごした私は、児童福祉の業界で社会人になりました。
数学とは一生関わることは無いと思っていたのですが、児童に教える立場になっていました。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
子ども達に教える中で学び考えた、算数・数学を学ぶ意義は大きく2つです。
1つは処理能力の向上
2つめは論理的思考の獲得
これ以外にも細かく分ければ身に着く力はありますが、今回はこの2つにフォーカスして書いていきたいと思います。
ちなみにK先生が「名探偵に成れる」と言っていたのは2つ目の論理的思考、それに付随した推論する力が身に着くからですね。
処理能力の向上
まずは処理能力の向上についてお話しします。
現在、我々の周りにはPCやスマホなど、便利な電子機器が溢れています。その中には必ず計算機能が付いており、人間が瞬時に行うのは難しいような計算も一瞬で答えを出してくれます。
じゃあ、計算なんて練習しなくていいじゃん。
やり方だけ教えてくれたらあとは電卓でするよ。
こういう声が聞こえてきそうです。
というか実際、勉強を教えていると子ども達からはこういう声が多く上がっていました。
低学年では少ないのですが、特に4年生以降の子ども達がこんなことをよく言っていたのを覚えています。
それに対して、皆さんならなんと答えますか?
私も前職で働き始めてすぐのころは言葉に詰まりました。
確かに自分も何か計算するとき紙と鉛筆を持ってきてやってないな、と思ったからです。
昔と違って今はほとんどの人がスマホを持ち歩いていますし、仕事で計算が必要ならExcelを使って式に当てはめればいいだけです。
そんな私や子どもに対して、上司がよく言っていたのは「計算は処理能力を高めるために繰り返しやる必要がある」という言葉です。
処理能力というのは計算だけではなく、認知した情報を適切に扱う能力です。
パソコンなら叩いたキーボードに対応した文字が入力されるのも”処理”ですね。
パソコンの処理能力は作ったタイミングで決まってしまいますが、人間の処理能力はトレーニングを通じて向上させることができます。
処理能力を向上させるメリットは、学習や仕事の効率が良くなるだけでなく、日常生活の何気ない動作もスムーズになる点です。
人間のすべての行動には思考が伴います。難しい判断が必要な動作や初めて行う行動は意識的思考、反復した行動では無意識的思考と違いはありますが、脳からの指令である思考をゼロにして行動することはできません。
処理能力を向上させることは、この思考にかかる時間を短くすることにつながるため、何をするにおいても重要なポイントなのです。
処理能力を向上させるために効果的なトレーニングは計算問題を解くことです。
特に、学齢ではなく能力に応じたレベルの問題を解くことで、能力を向上させることができます。
また、正確な処理ができるようになってきたら、時間を計ってみて、正確さとスピードの両立を目指す。それでも簡単になってきたら問題数を増やすなど、徐々に負荷を上げていくことで、大人も子どももこの処理能力を鍛えていくことが可能です。
論理的思考の獲得
二つ目が論理的思考の獲得です。
算数や数学を学ぶ意義として、特に現代においてはこちらの方が重要であると、私は考えています。
昨今は AI の発達により、あらゆる情報を効率的に収集することが可能になりました。しかし、現段階の AI では、その情報の真偽を保障することはできず、ネット上や学習元になったデータの多数派を回答として打ち出しているに過ぎません。
つまり、 AI という道具を使う側である人間が正しい思考ができないと、いくら情報を集める速度が上がっても意味がないのです。
AI による情報集の他に、現代での情報源として多く活用される SNS でも、この論理的思考は必要です。自分の趣味の情報や仲間内で使う分にはそこまで意識する必要はないのですが、選挙戦やテレビメディアへの不信感から、情報を集める手段として用いる場合には注意が必要です。
これらの話題について深掘りすると長くなるので今回は割愛しますが、論理的思考はこういった速度のある情報収集をフル活用するために必要不可欠な能力なのです。
論理的思考を一言で説明すると、物事を順序立てて客観的に考える力のことです。
この力が身に着くことで、目的と手段を分けて考え、客観的な選択ができるようになります。
そのため、 SNS やインターネットを利用して収集した情報の信憑性を判断することができるようになるのです。
ちなみに私は数学の学びなおしをするまで、この論理的思考が欠けていたなと思う点が多々あります。たとえば貯蓄型の保険、賃貸の仲介時に入ったままの高すぎる火災保険、そして営業に来た人に勧められるがままに切り替えた電気料金……
今思えば黒歴史ですが、あの失敗も数学を学びなおす中で(わずかに)獲得した論理的思考のおかげで今は何とかまともな生活を送れています。
論理的思考ができないというのは、情報過多な現代社会では大きなデメリットです。
トレーニングに最適な単元としては、方程式や証明の問題、文章問題が当てはまります。
以下のような方程式を例に考えてみましょう。
3X = 16 + X
方程式なので、目的は「X」を求めることです。
しかし、この例題では答えを求めるためにいくつかの手順が必要です。
まず、移項して文字と数字で分けます。
3X – X = 16
2X = 16
移項をする際には最終的な計算に狂いが出ないよう、符号を変換する必要がありますね。
同じ文字同士はまとめることができるので、先に計算して簡単にしておきます。
ここまで来たら両辺に X の前にある数字(係数)の逆数をかけて係数を消します。
※本筋とは関係ないので割愛しますが、2の逆数は1/2です
2X × 1/2 = 16 × 1/2
X = 8
X = 8
これは方程式でも初歩の問題なのでそこまで複雑な手順はありませんが、目的を達成するまでに手順を踏んで問題を解決していくという思考法は論理的思考の第一歩です。
証明や文章問題がハードルが高いと感じる方は、まず方程式から始めてみてください。
小学生の子ども達は文章問題からがおすすめです。
まとめ
算数・数学を学ぶ意義は、「処理能力の向上」と「論理的思考の獲得」にあります。
学校や受験を目的とした学習の中では見過ごされがちな視点ではありますが、フェイクも含んだ情報に溢れる現代で自分の望む人生を生きていくためには必要不可欠な力です。
今回は算数・数学が死ぬほど苦手だった私が学びなおして得た力をまとめてみましたが、どうでしたでしょうか。
これからお子さんに伝えるときや、自分に不足している力を補おうとするとき、少しでも参考になれば幸いです。
末筆に、私が学びなおす際に参考にした書籍を紹介しておきます。
文字での解説だけでなくイラストも豊富で読みやすかったです。
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